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デジタル施策、取り組むべき順序は?

公開日:2022/10/25

石井里幸(いしい・さとゆき)

※本記事は、既に自社サイト開設済みであり、かつBtoB企業を想定した内容になっています。

皆様の会社の自社サイトは、成果を生み出しているでしょうか?成果といってもその種類は様々あります。もちろん、サイト経由で受注や成約が達成されることが最もわかりやすい成果といえるでしょう。しかし、BtoBの場合は「問い合わせ」や「資料請求」などを“サイトの成果”とみなすことが多々あります。

BtoBでは顧客側の意思決定に時間を要する傾向が強く、サイトを見ただけで即座に受注や成約が達成されることは極めてまれです。したがって、問い合わせや資料請求を受けることにより顧客情報を取得し、長期的な関係を構築したのちに受注や成約につなげます。

このことから、問い合わせや資料請求という行動をとってもらうことも、立派な「サイトの成果」と呼ぶことができるのです。

これらサイトの成果のことをコンバージョン(以下CV)とも呼びますが、多くのBtoB企業では以下をCVとみなしています。

  • 資料請求
  • 問い合わせ
  • 見積もり依頼

皆様が自社サイトを開設しようと思われた理由は、これらCVの獲得によって受注につなげ、業績を向上させたいという期待があってのことと思います。しかし、実際には思うようにCVが獲得できていない。そんな思いから、様々な取り組みにチャレンジしようとしたはずです。

たとえばサイトに記事や動画を掲載したり、SNSからの流入を促したり、広告を掲載したりといった取り組みです。このように取るべき施策はたくさんあることは認識しているものの、いったいどこから手を付けてよいのか悩まれている経営者は多いと感じます。

ただ、企業の場合(特にBtoB企業)の場合は、自社サイトが存在しているだけで価値があるといえます。なぜなら、見込み顧客の多くは御社がどのような会社か、信頼できるのかといった情報を得ようと御社のサイトを検索し、訪問するからです。

検索したときにサイトが存在していないと、その見込み顧客は困惑します。「いまどき、自社サイトを持っていない会社なんかと取引して大丈夫だろうか…」と不安に思ってしまうのです。

ですから、自社サイトは存在しているだけで価値があるといえるのです。しかし、「存在していれば大丈夫」といった守りの姿勢では、新たな顧客の獲得につながりにくいものです。せっかくの自社サイトですから、効果的に使っていくべきでしょう。

そこで本記事では、これまで守りの姿勢が強かった自社サイトをより効果的なものとするために、どのような順番で取り組みを実施していくべきかについて触れたいと思います。

顧客の行動を分解して考える

以下は、顧客が御社のサイトを見つけてから、受注に至るまでの流れを示した図です。

  1. 検索などで御社のサイトを見つけ、【認知】する
  2. URLをクリックし、【サイト訪問】する
  3. サイト内を閲覧し、御社の製品やサービスに関心を示した結果、資料請求をする【CV】
  4. 検討した結果、購入を決意し【商談】へと進む
  5. 交渉の結果、合意し【受注】に至る

このように顧客の行動を分解することができます。次に、現状とのギャップを考えます。「いったい何が原因で、私たちのサイトは成果がでていないのか?」について考えてみましょう。これをしっかり考えないと、SNSを始めたりウェブ広告を打ったりと闇雲に施策を繰り出すことになり、成果が得られることなく社内のリソースを消費することになってしまいます。

「自社サイトは存在しているだけでも価値がある」とお伝えしました。サイトがインターネット上に存在している以上は、閲覧数がまったくのゼロということはまずありません。少なくともすでに御社を認知している人は存在しており、その人は会社名でGoogle検索するなどし、見つけてくれているはずです。(会社名を直接検索エンジンに入力して検索すれば、検索結果の1ページ目に表示される企業が多いはずです)

つまり多くの企業は、「サイトへの流入はある。しかし現状は(問い合わせなどの)成果につながっていない」という状況であると考えられます。せっかく見込み顧客がサイトに訪れてくれているのに、問い合わせをすることなく離脱してしまっている。これはバケツから水が漏れている状態にたとえられます。まずは穴をふさぐ必要があります。

これが、SNSや広告を始めるといった「サイトの認知を高める」前にまず、「CV獲得につなげる」ことを最優先に取り組むべき理由です。

取り組みには次のようなものがあります。

【認知拡大施策】
サイトの認知を高め、サイトに訪問してもらうための施策です。

【CV獲得施策】
CV獲得につなげるための施策です。

【セールス効率化施策】
CV獲得後に商談につなげるための施策です。

【受注率アップ施策】
商談後に受注率をアップさせるための施策です。

CV獲得施策から着手する

上記の施策のうち、多くのBtoB企業は【認知拡大施策】を優先しがちです。確かに、そもそもサイトが認知されていなければサイトへの流入がなく、CV獲得につながることはありえません。

しかし先にも述べたように、BtoB企業は社名で検索されることがあるため、サイト流入がゼロということは通常ありえません。アクセスがあるにもかかわらず成果につながっていないということは、サイト内に「顧客が探していた情報が見当たらない」「見つけにくい」「情報が不足している」といった理由が考えられます。それにより、見込み顧客は御社へのコンタクトを見送った可能性があるのです。

そこで、【CV獲得施策】から着手することを推奨します。当然、母数である「流入数」が増えたほうが効果的であることは間違いないので、可能であれば【認知拡大施策】も併せて取り組みたいところです。

しかし、中小企業はリソースが限られているため、優先すべきは【CV獲得施策】です。ここでの代表的な取り組みは、ウェブサイト改善とホワイトペーパーの作成です。いずれも効果的に行うことにより、大きなCV獲得につながります。それぞれ見ていきましょう。

ウェブサイト改善

BtoBは法人が顧客となることから、顧客はウェブサイトの見た目(デザイン)よりも、信頼感と実績を重視する傾向があります。そのため顧客が求めている情報をきちんと掲載できているかについてチェックしましょう。

【信頼感を感じてもらうための情報】

  • 会社概要
  • 代表者(社長)のプロフィール
  • 製品カタログ・サービスメニュー
  • 価格表
  • FAQ(よくある質問と回答集)ページの配置
  • 採用ページの配置

【実績を伝えるための情報】

  • 導入事例(導入したことによりもたらされた成果を記事や動画で伝える)
  • 受賞歴など

皆様の会社のウェブサイトには上記のような情報が掲載されているでしょうか?もしないのであれば、掲載を検討してみてください。意外と少ないものが、FAQと採用ページです。

FAQは顧客の悩みごとや、探している情報を想定して回答を先回りして掲載しておくものです。それにより顧客の満足度が向上し、SEO向上効果も期待できます。その理由は、Googleはユーザー満足度の高いサイトを上位に表示させるためです。

また、採用ページも効果的です。企業が積極的に採用を進めている姿勢は、しっかりと活動している企業であることをアピールできますし、広告費なしで求めている人材を採用できる可能性を秘めています。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは近年になってよく聞かれてるようになってきた用語であり、まだよくご存じない方も多いかと思います。これは「顧客の課題を解決するための資料」とお考え下さい。多くはPDF形式でダウンロードでき、顧客の企業内で提案資料として使用してもらうことを想定します。

ホワイトペーパーを制作する目的は“見込み顧客情報の獲得”です。ダウンロードしてもらう際に、顧客情報をフォームに入力してもらうことを必須とすることで、顧客の情報を得ることが可能になります。

当然ながら、ホワイトペーパーは、顧客にとって「個人情報を入力してでも欲しいもの」でなければなりません。しかし、言い換えればそこまでしてダウンロードしてくれる人は、かなり見込み度合いの高い顧客であるといえます。

顧客が困っていることや悩みに対し、解決策を提示するような資料を制作しましょう。そのうえで、自社の製品やサービスがその悩みをどのように解決するのかについても触れるとよいでしょう。また、競合他社の製品との違いを示すことができれば効果的です。

制作したホワイトペーパーのダウンロードを促すためには、トップページの上部など、自社サイトの目立つ場所にダウンロードボタンを配置するなどします。ボタンを押せば、個人情報の入力フォーム画面に遷移し、氏名や電話番号、役職等の必須項目が入力されていればダウンロードボタンを押せるようにしておくと理想です。

トップページの改修が難しい場合、問い合わせフォームに必要情報を入力後、後日メールにて資料を送付するといった方式でもよいでしょう。

まとめ

SNSやウェブ広告といった認知拡大施策よりも、まずはCV獲得施策から取り組みましょうというお話しでした。そのなかでもまずは「自社サイトの改善」から取り組むとよいでしょう。

SNSやウェブ広告などでせっかく認知を高めても、自社サイトが効果的でなければせっかくの訪問者が離脱しまいます。このような状態では、どれだけサイトの認知を高めたとしても効果は限定的になります。中小企業はリソースが限られているため、取り組み順序を意識したうえで、効果的にデジタル施策を進めていきましょう。

コラムニストプロフィール

石井里幸(いしい・さとゆき)

中小企業診断士、ITコーディネータ。
中小企業向けに「ITの便利さを実感してもらうための活動」を行っている。
ITツールの導入からWebサイト運用まで、中小企業のIT周りを全面的に支援する。