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SEOで集客力UP!ニッチなワードの王者になれ!

公開日:2022/09/28

原田隆治(はらだ・たかはる)

社名や店名そのままでネット検索してくれれば上位には表示されるものの、「ハンカチ」のような固有名詞以外の単語(一般ワード)での検索では上位に出て来ない。・・・そんなWEBサイトはかなり多いのではないでしょうか。

そのような状態では、WEBサイトへの来訪者はすでに社名や店名を知っている人だけで、そうした方以外の新規の見込顧客に対する集客にはあまり活かされていないということになってしまいます。

今後、集客の主軸がオンラインにますますシフトしていくと予想されるため、検索結果から新規のお客さんをどんどん連れて来られるようにしていきたいものです。今回は、SEOで新規顧客の集客や会員登録を大きく伸ばしていった事例をご紹介します。

【Before】それまでのネットでの集客施策

今回取り上げる事例は筆者が以前支援した企業(以下「A社」)で、創業数年、社員数名の立ち上がったばかりの会社でした。「食品を企画し製造を依頼する企業」(以下「依頼企業」)と「食品工場を持つ企業」(以下「工場企業」)をオンラインでマッチングさせてOEMでの食品生産を活性化させるという新規事業を行っています。

依頼企業は自社で企画した食品を商品化するために、OEM生産ができる食品工場を探す必要があります。一方で工場企業は、工場の稼働率向上などのためにOEM生産を依頼してくれる会社を探しています。しかし、非常に多くの企業の中から双方にとって最適な取り組み先を見つけることは非常に困難でした。

そこでA社はこのBtoBのマッチングサイトを立ち上げ、ロットやリードタイム、コストなどの条件に合った相手を見つけやすくするサービスを開発しました。

マッチングの流れとしては、多くの工場企業が登録されたサイトを依頼企業側が見に来て、条件にあった工場企業を探す、という順序が一般的です。A社は、工場企業に対し個別に登録を促す営業などをしており一定数の工場企業の確保はできている状況でしたが、いつどこで新たな案件が生まれるか分からない依頼企業の集客に苦戦していました。依頼企業をどう増やしていけるかが今後の事業拡大のポイントで、そこをもっと拡大していきたいと経営者は考えていました。

当時この会社が行っていたオンラインでの集客対策は、キーワード広告による有料の広告のみで、そのキーワードもいわゆるビッグワード(ビッグワードとは非常に多く検索される言葉のことで、検索結果で表示される競合も多いことになります。)と呼ばれるものでわずか4ワードのみでした。社名で検索すればもちろん上位に表示されますが、一般ワードでの検索では自然検索結果(オーガニック)に表示されることはまずありませんでした。 

【To Do】オーガニックを強化してニッチで勝とう!

キーワード広告ももちろん重要で、費用対効果が合っているうちは続けるべきではあるのですが、より多くの検索からの流入を増やすためにはオーガニックからの流入を増やす必要があるのではないか、と筆者は考えました。

そもそも、広告よりもオーガニックの方がユーザーからの信頼感は高いものです。お金を出してまで広告を出しているということは、このサイトに入っていくと最終的には課金されるということなのでは、とユーザーが警戒してしまうからです。

そして、こんなことも考えました。「依頼企業の立場になって考えると、検索する時に果たしてビッグワード(例えば、『食品 OEM』など)で検索するのだろうか?」「ビッグワード検索から出てきた膨大な検索結果から、自分が今企画している商品を作れる工場を探すのは大変なのではないか?」「自分だったら、今企画している商品に絞って検索するな(『ドレッシング OEM』など)」

余談ですが、筆者が会社勤めをしていた頃、食品の企画担当者としてOEM先の食品工場を探していたことがありました。その際もピンポイントで対応できる工場がすぐ見つかるよう、細かめの食品名で検索していました。

しかし、支援先のサイトの1枚のトップページに、「ドレッシングOEM」「カレー OEM」「チョコレート OEM」…などと無数の食品の情報を入れるだけ入れて検索に引っかかりやすくすることは技術的に無理があります。そうであれば、ページを分ければ良い、と考えました。

そこで、「ドレッシング OEM」「カレー OEM」「チョコレート OEM」などそれぞれの検索ワードから着地するランディングページ(ランディングページとはユーザーが最初に閲覧するWEBページのこと)を別々で作ることとしました。そして、それぞれのランディングページでタイトル(検索結果で表示される大きな字の部分)やディスクリプション(検索結果でタイトルの下に表示される2行くらいの説明文)に検索で使われそうなワードをたくさん盛り込むよう工夫をしました。そのようにして、62種類の食品に応じたランディングページを作り、それぞれを公開してゆきました。

【After】アクセス数33%UP!新規会員80%UP!

結果はすぐに現れました。まず検索順位ですが、ランディングページ公開からおよそ5か月後の時点で、62種の「〇〇〇 OEM」で検索したところ検索結果の1ページ目に表示される10位以内で62%、5位以内で49%、そして1位で14%と上位の表示を獲得することができました。

これはビッグワードでの検索結果にはこだわらず、62種のニッチなワードをロングテール化させ、そのニッチの中でそれぞれのランディングページが他社のWEBページよりもより良いサイトだと検索エンジンに評価された成果です。

そして、検索結果で表示される競合サイトは、主にOEM生産をできる個別の工場企業のサイトであるため、当然1社分の情報しかありません。一方でA社のサイトは、例えば「ドレッシング OEM」からのランディングページであれば、ドレッシングを生産できる登録工場が数十件表示されます。

当時は全社分の工場情報の詳細を会員登録前の依頼会社にも公開していましたので、直帰(1枚目のページだけ見てすぐに検索結果ページに戻ってしまうこと)することなく各工場の詳細ページに飛んだ後しばらく回遊し、おのずと滞在時間が長くなってゆく、という構造でした。

競合サイトと比較して「直帰率が低い」と「滞在時間が長い」というのは検索エンジンからすると「良好なサイトである」と認識される重要な要素です。良いサイトと認識されると、検索エンジンはそのサイトへと進んで流入させようとしてくれます。したがって、時間がたつに連れ勝手にどんどん検索順位が上がってゆくという素晴らしいスパイラルにもなりました。

その結果、検索からのアクセス数はランディングページ公開後わずか10週間で、公開前の10週間と比較し33%アップ、新規の会員登録については同じ期間での比較で80%のアップを記録しました。

大量のランディングページを作っていくことはそれなりに手間がかかりますが、キーワード広告の様にランニングコストがかかり続けるわけではありません。サイト構築の初期コストだけで、日々の労力やコストをかけることなく自動で良質な依頼企業からのアクセスが数多くあり、実際に会員登録にも繋がっています。

中小企業が力を入れていくべきなのは、こうしたオーガニックでの対策であり、少しずつでも良いのでニッチな検索ワードで勝てるランディングページを作っていくことが有効です。

コラムニストプロフィール

原田隆治(はらだ・たかはる)

中小企業診断士。ダイレクトマーケティングに強い大手出版社にて25年、通信販売(カタログ・Eコマース)事業やマーケティング活動に従事。TVCMやLINEなどSNSの企画、新規事業開発、スマートホンアプリ開発、読者イベント開催など歴任。現在は中小企業の販促、営業等を中心とした支援を行っている。