自社の「強み」の表現の磨きかた
大谷 秀樹(おおたに・ひでき)
2021.01.28
前回のコラムでは「私たちは会社や製品の特徴をいかに伝えるか、その表現力を磨く必要があります」と結びました。そこで今回は、会社や製品の特徴、すなわち「強み」の見つけ方と、その「伝え方」に触れてまいります。
1.「強み」の見つけ方 〜「できたこと」に注目する〜
早速ですが、「御社の強みはなんですか?」と聞かれて、答えに困ったご経験はありませんか。「弱み」とか「問題点」は山のようにあるのですが、「強み」となると沈黙してしまいがちです。中には「それがあれば苦労しないよ」とお答えになる方もいらっしゃいます。でも、現に製品やサービスを買ってくれる人がいるのですから、そこに強みはあるはずです。強みがないのではなくて、強みの「見つけ方」に慣れていないのです。そこでここでは「強みの見つけ方」を考えます。
まず、練習としてご自身のことを考えていただくことから始めましょう。簡単なワークです。今日、「良かった」と思えることを、5つ思い浮かべてくださいというものです。
「5つもないよ」と思うかもしれません。でも、ここで大事なのは「とにかく5つ」考えることです。試しに「良かった」のレベルを下げてみてください。特別な何かではなく「小さな良かった=できたこと」を見つけることがコツです。例えば私なら、「今朝は予定通りに起きることができた」「家族と食事がとれた」「原稿の締め切りになんとか間に合った」などをあげるでしょう。このように「できたこと」なら5つあがるのではないでしょうか。
会社についても同じです。長く続いていること、納期遅れなし、クレームなし、A社との取引は10年続いている、製品Aが月間40個売れた、などのように、とにかくできていることをあげてください。コロナ禍で様子が変わったかもしれませんが、会社の基本的な強みを考えるので、コロナ前に遡っても構いません。
さて、「できていること」がいくつかでたら、それらを支えている要素を考えてください。例えば「納期遅れがない」のは管理担当Aさんの仕事の成果なら「当社は納期管理に長けている」と言ってよいでしょう。このように考えると「強み」は見えてきます。
2.強みの「伝え方」 〜顧客視点に置き換える〜
前項で例とした「納期管理に長けている」という強みを、どのように表現すると伝わりやすくなるでしょう。ホームページやメールなどオンラインツールで伝えるには、表現の工夫が必要です。ポイントは、その「強み」は顧客にとってどのような価値になるか「顧客の視点」で考えることです。例とした「納期管理に長けている」ことは、顧客にとってどのような価値になるでしょうか。顧客の立場になって少し考えてみてください。
「納期管理に長けている」ことは、例えば仕入れの安心感につながります。さらに言えば必要なものを、必要なときに、必要なだけ仕入れれば良いので、余計な在庫をもたずに済みます。つまり「在庫コストの圧縮」さらには「資金繰りの改善」につながる可能性があります。

(図)強みの見つけ方と伝え方
このように、顧客の価値に置き換えて表現すると、顧客にとっては発注メリットが明確になりますので、オンラインでも伝わりやすくなるのです。
コラムニストプロフィール

大谷 秀樹(おおたに・ひでき)
中小企業診断士、認定支援機関、株式会社大谷秀樹事務所 代表取締役 中堅の広告代理店でプランナーとして24年間従事。中小企業診断士登録後「中小企業・小規模事業者の活躍する社会こそが豊かな社会である」との想いから2012年に独立。売上向上などの経営課題を中心に多数の経営支援に携わる。