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プレスリリースの重要性とその基礎知識

公開日:2023/01/13

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

プレスリリースの重要性

中小企業の経営者の方とお話をしていると、「大手企業のように広告宣伝費がないので、新商品を出しても、なかなか世間に知ってもらえない。」という声を耳にします。その際に私は、「広報はしっかりとやられていますか?」と伺うと、「うちみたいな中小企業が広報活動をしても、簡単に注目を集めることはできないでしょう?」と答えが返ってくることが度々あります。

そこで私は、「それは、プレスリリースをしっかりやってから言いましょう。事実、プレスリリースの書き方を学び、目的を持ってメディアに発信した結果、大手新聞社からすぐに取材依頼が来たケースがあります。」と話します。これは本当の話です。様々なメディアの記者・編集者は常に視聴者・読者に提供する新しいネタを求めています。そこに適切に働きかければ、広告宣伝費をかけずに、御社商品・サービスのアピールをすることができるのです。

プレスリリースは、企業・団体のPR活動の一環として、新製品・新サービスなど社会や消費者に伝えたいモノ・コトを正しく伝えることを目的に、その案件の概要を簡潔な文章にまとめ、メディアに発信する文書のことです。資金力が限られている中小企業にとっては、有料の広告に頼らずメディアの報道性を活用して無料で消費者に情報を伝える手法です。バイヤーやパートナー企業に、自社や自社商品・サービスを選んでもらう貴重な機会の創出でもあります。プレスリリースは、「新しい」「初めて」などのニュースバリューがより重要視されるものの、商品・サービスの発売後でも、決して遅いということはありません。記者・編集者は、プレスリリースを企画・特集のニュースのネタとしてストックすることがあるからです。

テレビ・新聞・雑誌・SNS・Webニュース等のメディアの記者・編集者は、いつでも視聴者・読者に提供する情報を求めています。近年は、プレスリリースを構成要素として記事にするメディアが増えていますので、狙ったメディアの特性に合わせた書き方が望まれます。取り上げてもらいたい願望を極力抑えて、情報提供者という客観的な立場で書くことを心がけましょう。

戦略的なプレスリリースを作成するポイント

メディアに提供する情報に、バリューやニュースソース要素がなければ、取り上げてはもらえません。バリューやニュースソース要素を作り出すためには、以下の5つのポイントを押さえる必要があります。
①新規性(新奇性)…業界初。まだ世の中に出ていない画期的な新商品・新技術・新規事業。
②物語性(ドラマ性)…人間味のある開発秘話。読者の感動を呼ぶストーリー。
③社会性…世相・トレンドに絡んでいる。国や自治体の施策やSDGs・CSRに沿っている。
④流行性…時代の一歩先もしくは半歩先を行っている。トレンドをつかんでいる。
⑤地域性…地域貢献をしており、その歴史・文化・最新トピックスを発信したり、それらに関わっている。

プレスリリースの基本的な構成

プレスリリースの基本的な構成(一例)は、以下のとおりです。

① タイトル(キャッチコピー)

記者・編集者がプレスリリースを手に取った時に、真っ先に目に飛び込んでくるものです。何が一番の売りなのか、短いキャッチ―な言葉で書いてあるものが目を引きます。数十秒から1分程度で要・不要が判別されるプレスリリースの中で最も重要な部分です。タイトル(キャッチコピー)は、リード文の要約を書くくらいのつもりで取り組む必要があります。最大級ワード(最高・高級・これまでにない・例をみない等の根拠を示せない言葉)や、「!」「!!」「!?」などの、強調記号の使用は避けましょう。

② リード文(リードコピー)

タイトルに興味を持った記者・編集者に、その概要を紹介する部分がリードコピーです。リード文は、発信主体である企業名や団体名から書き出すのが一般的で、会社名の後のカッコ内には本社所在地と代表者名を入れます。続けて、誰が(Who)、いつ(When)、何を(What)、どこで(Where)、なぜ(Why)、どのように(How)という5W1Hの要素を含めた全体像の要約やポイントを箇条書きします。この「タイトル(キャッチコピー)」と「リード文(リードコピー)」の工夫次第で、採用可否が決まると言っても過言ではありません。

③本文コピー

プレスリリースの基本は、頭括構成です。つまり、結論を先に述べることで、最も伝えたい大切なことを効果的に伝えられる文章構成です。記者・編集者の先には視聴者・読者がいることを意識し、できるだけ専門用語・業界用語は使わず、主語と述語を明確にしたわかりやすい短文を心がけましょう。タイトル・リードコピー・本文コピーでA4 1枚程度にまとめるのが理想ですが、具体的な数字やスペック・特許・事例などを補足項目として、後半部分に入れて説得力を高める方法もあります。
以下にプレスリリースの参考例を示します。

プレスリリース一例

プレスリリース テキスト例

PRESS RELEASE

報道関係者様                         
2022年○○月○○日
□□□□□株式会社                           
サブキャッチコピー(15~20字程度) ※タイトルの下段でも可
~電力供給ひっ迫状況下の8月1日に緊急発売~
タイトル/キャッチコピー(20~30字程度)
消費電力を約30%削減した
エアコン「スーパークリーナー」を開発
リードコピー(50~80字程度)
〇〇機械工業株式会社(本社所在地:東京都江東区、代表取締役○○○○)は、電力供給がひっ迫し、節電の重要性が高まっているこの状況下で、消費電力を約30%(当社2018年モデル製品比)削減したエアコン「スーパークリーナー」を、8月1日に緊急発売します。
本文コピー(270~300字程度)
この製品は、△△という新型モーターを搭載した省エネタイプの家庭用エアコンで、価格も
当社2018年モデルとほぼ同額に抑えました。主要パーツである半導体も確保済みで、〇〇万台を8月末までに製造可能となっております。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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■補足項目など                   PHOTO ②
■スペックなど 
PHOTO①
        PHOTO ③
〔お問合せ先]         
 〇〇機械工業株式会社 広報課 担当:〇〇〇〇
                電話:         FAX:

プレスリリース レイアウト例

プレスリリースの送付先

最近では、プレスリリースの代行サービスを利用する企業が増えています。確かに、メディアのメールアドレスリストがなかったり、メールアドレスを集める時間・要員が不足しているものの、広告宣伝費が比較的潤沢な企業・団体にとって、代行サービスは大変便利です。代行サービス運営企業は数百~数千のメディアのリストを保有していますし、原稿の校正や効果測定といったサービスを提供する企業もあります。ただし、月額5~10万円程度の利用料金が必要ですし、必ずしも自社にフィットしたメディアにアプローチができる訳ではありません。どうしても、アプローチが薄く広くなるので、ヒット率は低くなってしまいます。

そこで、中小企業経営者の皆様には、書店で販売している「マスコミ電話帳」や「広報・PR手帳」等を活用することをお薦めしています。高確率・高頻度でメディアに取り上げられるコツは、自社にフィットするメディアを複数決めて、定期購読・定期視聴を繰り返しながら、メディア特性をつかんでおくことです。その上でメディアリストを作成して、メディアの編集者宛にメールや郵便で、直接プレスリリースを発信してみましょう。アナログな手法ではありますが、結果的にこの手法が最もヒット率を高めるのではないかと思います。

以上、プレスリリースの重要性とその基礎知識について説明してまいりました。重要なことは、メディアとコミュニケーションをとりながら、メディアに優先的に自社の情報を取り上げてもらうことです。そのために、視聴者・読者に提供する新しいネタを求めている記者・編集者のニーズを把握し、彼らの求めている価値の高い情報を継続的に発信することを心がけたいものです。

コラムニストプロフィール

原田泰宏(はらだ・やすひろ)

中小企業診断士(マーケティング・営業・社員教育専門)
1960年宮崎県生まれ。大手旅行代理店で35年5か月、法人営業・商品開発&プロモーション・新規事業開発に携わり、2018年9月に独立。現在は、旅行会社・宿泊施設・飲食店などをコンサルティングすると共に、東京都中小企業振興公社を始めとする公的機関から派遣され、中小企業のマーケティング支援を行っている。